訪問の理学療法士として働く私ですが、最近の臨床の悩みはもっぱら利用者さんの心の問題。
体は良くなっても家族関係がうまくいかない、外に出たり、人と関わる自信がもてなかったり。
体と心は密接に関わりあっていると痛感しています。
高齢の方の中にはこの人も発達障害をもっているんじゃ?という方もいらっしゃいます。
発達障害の素因がある人は10人に1人とも言われています。最近増えてきたように言われていますが、昔からいたのは間違いないし、現代社会が凸凹さんたちにとって生きづらい時代だともいわれています。
私が仕事で関わる高齢者福祉、そして母として向きあう娘の発達障害。自分の日常に混在する一見関係なさそうな2つの悩み。色々と勉強していくうちにクロスオーバーする気がしてなりません。
自閉症スペクトラム症(ASD)とは?
ASDの主症状
●人との関りやコミュニケーションの障害
●想像力、見通しの困難
●こだわりや反復的な行動
●感覚の過敏さ、鈍感さ
ASDの類型
●高機能自閉症
→知的な能力の遅れを伴わない自閉症
●アスペルガー症候群
→知的な能力の遅れがなく、かつ言語発達の遅れのない自閉症
●特定不能の広汎性発達障害
→自閉症診断基準の一部に該当するが自閉
症の診断基準を満たさないもの
スぺクトラムってなんだ?
スペクトラムとは連続体と訳します。例えば虹を想像してみてください。七色といわれますが、色と色の間にははっきりとした境界線はなくグラデーションになっていますよね。
自閉症の特徴は典型的なものから、軽微なもの、まったく傾向のない人までが含まれています。例えば問題なく社会生活を送っている定型発達といわれる人のなかでも、人見知りだったり、行列を並ぶのが苦手だったり、これは譲れないというこだわりがあったりしませんか?どうでしょう?自分を含め誰もがそういう傾向を持っているような気がしませんか?
精神発達の基本構造
こころの仕組みは、個人の脳のなかで成り立っているものではなく、外の世界(社会)とのつながりをもって成り立っており、その時、その時代の社会や文化のあり方しだいで、精神発達の在り方は多様なバリエーションを持つと考えられます。
その時代の社会情勢と子育ては密接な関係があるそうですよ。
「正常発達」なるものは存在せず、その時代と社会のなかで、もっとも一般的な養育形態を通して育った子どもをかき集めて平均をとったものと比較されます。
「正常なんてない」
この一文ですごく救われたのを思い出しました。
「知ること」と「関わること」
約40週間お腹のなかで過ごした赤ちゃんは外の世界を知らず一人で過ごしています。
それが出産を経て、いきなり未知の世界に放り出されるわけです。
生きていくにはまず周りの世界がどんなところかを知らなければならない。そして、知るためにはまわりの世界と自ら積極的に関わっていくことも必要になる。
周りの世界を「知ること」→認識の発達
周りの世界と「関わっていくこと」→関係の発達
この2つの仕事を続けていくことが「精神発達」の基本構造となります。
・認識の発達
世界をただ物として物質的にとらえていくのではなく、まわりの人たちが歴史的・社会的・文化的につくりあげて共有している「意味」や「約束」からなる概念の世界としてとらえていくことの発達
・関係の発達
ただモノとしてある環境世界に物質的に関わることではなく、まわりの人達と対人関係的・社会的にかかわっていくことの発達
さて、これはなんでしょう?
筒状のもの。横になんかついてますね。
コーヒーカップです(笑)
では私たちはなぜ?これがコーヒーカップだと知っているのでしょうか?
自分がそれをコーヒーカップだと知っているのは、周りの人間が使っているところをみたり、触って感触をたしかめたり、名前をきいたり、使い方を教えてもらったりしたからです。
ただカップの横にすわってじーっとみているだけでは、その物体の「意味」や「使い方」を知ることはできないのです。
つまり子供は、すでにそれを知っている大人達と密接なかかわりを通して学習することが必要となるというわけです。
うちのにくっぺの場合
さて、うちのASD娘にくっぺはどうだったのか。思い出す限りこの特徴と照らし合わせて考えてみようと思います。
うちのにくっぺは言語発達が良く、実年齢+1歳と言われました。
旧分類では、アスペルガー~広汎性発達障害あたりに分類されるでしょうか。
アスペルガーは関係の発達に遅れが出ると言われています。
そういわれると塩ベイビーだった
にくっぺは赤ちゃんの時から全然手のかからない子でした。新生児の頃からおっぱいを飲んで腹が満たされれば寝る、お風呂に入れればうっとりしている、抱っこしてユラユラして、寝かしつけなくても勝手に寝ている…気づいたら床で寝ている…
なんかこの子楽勝すぎる…
お兄ちゃんのぼーは寝るのが下手くそで、背中スイッチ超敏感タイプだったので、常に抱っこかおんぶ。寝ぐずりが凄かったため、それと比較してしまい、ベビーにくっぺは肩透かし食らうほどの楽勝ベビーだったのです。
しかも食欲旺盛。7ヶ月頃に初めてサツマイモをあげたら、すっかり気に入っておかわりを要求。
飯の美味さを知ったにくっぺは離乳食をバグバク食べ、お腹が満たされ、夜中も起きなくなりました。私のおっぱいが夜中に破裂寸前になり、おーい乳痛いからちょっと吸ってくれ〜とこちらがお願いして半ば強制的に吸ってもらう始末。
そんな塩対応の赤ちゃんだったのですが、発達心理の先生の話によると、やはりこれはこれで特性が出ていたようです。
泣くことによってお母さんの気を引き、かまってもらう。それがうまくできなかったのではないかと先生にいわれました。
にくっぺは観察力があるのですが、あまり説明を聞かず、独自の方法を展開しがちな子です。
新生児のころから自分で寝つくという独自の方法を編み出していたのかと思うと、もうそれってたくましくない?と思うわけです。
そしてASDグレー疑惑の旦那の赤ちゃんの時の話を義母に聞いたら、
育てやすくて、全然泣かないし~。妹はもう泣いてばっかりで困ったと。
ひーおばあちゃんに言わせれば、妹ちゃんが本来の赤ちゃん、お兄ちゃん(うちの旦那)の方が変わってるんだよ。と言われたそうな(笑)
ひーおばあちゃん、鋭い!!
血は争えませんな。。。
同じASDでも育てにくい子、育てやすい子いるみたいです。そのあたりがスペクトラムと言われる由縁でしょうか。
引用、参考文献:子供のための精神医学 滝川一廣